閑静な住宅エリアに位置する集合住宅だが、敷地そのものはJR山手線の線路に面している。
線路側の防音壁は、疾走する電車が発する騒音から住居を守る「楯」であり、この建物の大きな特徴となっている。
この防音壁は、ランドマークとして電車内からも建物の個性を楽しめるよう、疾走する山手線をイメージしたデザインとしている。
また、住居本体は、モダンデザインでありながら材料の質感を楽しめる住空間とした。「物質の持つ温度・手触りが人の感性を豊かにする」と考え、”住まい”がその発端となることを目指した。
部分的な材料ではなく、住空間を構成する基本的な要素である壁、床等の材料を質感豊かなものとしており、建物の本質であるコンクリートに加え、天然木材、磁器タイル、光沢パネルを組み合わせて構成された室内は、いつどこを見ても素材の質感が持つ迫力や暖かみを感じることが出来るよう、配慮している。
騒音を伴う線路際の敷地を悪条件とは捉えず、防音壁を兼ねた壁面にデザインを与えることで、ランドマークとして成立させている。
都市中心部で生活する人々は、工業製品に囲まれた生活を送るうちに、木材やタイルといった、素材にふれた時の温度や感触の記憶が薄らいでいるように感じます。そういった環境の中で、「触れる」という身体的な感覚を大切にしたいと考えています。
IPSE目黒では、住み手が生活環境を構成する素材の温度や手触りを対比的に感じとれる状況を確保することで、都市生活者の感覚を改善するよう目指しました。様々な材料を部材仕上げでなく、空間の構成素材として用いたため、仕上材料の配置を住戸ごとに丹念に計画しています。
名称 | イプセ目黒 |
竣工 | 2008年3月 |
所在地 | 東京都品川区上大崎 |
用途 | 集合住宅 |
構造・規模 | 鉄骨鉄筋コンクリート造(壁構造) |
階数 | 地上3階地下1階 |
施主 | 株式会社モリモト |
設計 | 株式会社イズム建築計画 |
施工 | 株式会社佐藤秀 |